1948(昭和23)年より始まり、今日に至るまで鎌倉の伝統ある夏の風物詩として、地元の方のみならず多くの方々に長年愛され、親しまれてきた鎌倉花火大会。ド派手な演出や打ち上げ数が他に比べ多いわけではありませんが、鎌倉の花火大会に“特別感”を抱く方は少なくありません。それは、社寺や自然に囲まれ、豊かな海に打ちあがる鎌倉ならではの環境がそう思わせるのかもしれません。
鎌倉花火大会の代名詞のひとつ「水中花火」の存在も大きな要因です。次々と海に投げ込まれては、扇状に花火が開く、みやびでとても美しい花火、それが水中花火です。
1993(平成5)年10月に発行された鎌倉市観光協会の機関誌「瑞光」では、水中花火の誕生について次のようなエピソードが残されていました。
現在の水中花火になったのは、昭和43(1968)年ごろで、千葉県の銚子の花火大会で、ある業者が打ち上げ花火の中で、6寸の芯ものが一つだけ海の中で半円形に開いたものがあったのです。非常にユニークなもので今まで見たことがない新種玉のように見えたのです。非常に感動して、その業者に聞いたところ、『あれはあやまって海に落としたものなんだよ』と言って大笑いをしたものです。
これをヒントに、海に投げ込む水中花火が生まれたとか。波や潮流を計算しなくてはならない花火師の神業があってみられる水中花火。長年にわたり愛されてきた水中花火ですが、現在もその伝統は新たな技術が加わり受け継がれています。今年は5年振りだけに、ひと際美しく、じんわりと、皆さまの心に響きまように。